本場のフランス伝統菓子の継承を使命と語る「パティスリー・ノリエット」永井紀之氏の抱く視点|Coffee Lounge|Nespresso Professional

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フランス菓子職人という生き方を選んで。本場のフランス伝統菓子の継承を使命と語る「パティスリー・ノリエット」永井紀之氏の抱く視点

2023/10
「パティスリー・ノリエット」永井紀之氏

世田谷・下高井戸の商店街を抜けたところに、「パティスリー・ノリエット」はあります。本場のフランス菓子・パティスリー文化をそのまま持ち込んだお店のラインアップは、お菓子からお惣菜まで幅広いものです。
パティシエの永井紀之氏に、フランス菓子への想いや、職人としての拘り、そしてネスプレッソを導入された理由、使用済みコーヒーカプセルのリサイクル回収ポイント(回収場所)のパートナーとして協力する理由などについてお伺いしました。

自分の選んだ道はフランス菓子職人。それはフランス文化への理解なしには語れない。

永井紀之氏

永井紀之シェフのお言葉

最初は料理人を目指していました。調理師学校を出た後フレンチレストランで働いていたんですが、そこが急に閉店することになって。そのレストランのパティシエだった先輩が、以前はフランスで「オーボンヴュータン」の河田さんと一緒に仕事をされていた人で、河田さんも日本に戻ってお店をオープンされるというので、その先輩が二番手として呼ばれ、その時に僕を誘ってくれたんです。僕は他のレストランの働き口を探していたんですけど、なかなか思うように見つからなくて。そんな時、「将来自分で店を出す時のために、今のうちにデザート勉強しとくか?」と声をかけてくれて、僕はその先輩を慕っていたので、そういう進み方もあるかなと付いて行くことにしました。それが最初のきっかけでした。

その河田さんの「オーボンヴュータン」が、フランスの菓子屋をまるっきりそのままもってきたようなスタイルのお店で。本来のフランスの菓子屋は、菓子だけでなく総菜やパンも自分達で作って売るんですけど、当時はまだ日本にはなかった、そのスタイルで学ばせてもらったのが刺激的で楽しかったですね。
最初は、レストランのデザートに使える技術を数年学んだら、また料理の方に戻るつもりでいたんですけど、楽しくて居心地も良くて、そのまま菓子屋の仕事を続けることを決めました。

その後フランスに行くんですけど、その前に河田さんと先輩と決めた渡仏の目的があって。その当時、日本の製菓技術は既にそれなりのレベルにあったので、二人からは、「フランスの文化にどっぷり浸かってそれを感じて来れなかったら行く意味なんかないぞ」と言われました。行くからには「3年は帰ってくるなよ」、「向こうに行っている間、和食なんか食べてるんじゃないぞ」ということも言われて。

それまでも「フランスの食文化を理解しないでフランス菓子が語れるか?」というようなことは度々言われて、僕自身もそれは身に沁みていたので、二人の言葉はしっかりと受け止めました。実際には3年では全く足りず、戻って来たのは6年後ですね。

地元の住人の食生活を支える、日常の生活に溶け込んだフランスの菓子屋

「パティスリー・ノリエット」店内写真

フランスの菓子屋というのは、日本に浸透している洋菓子屋とは異なる文化を持ちます。
フランスでは、基本的に菓子屋というのはその町に住む人の食生活を支えるためにあるもので、日本のように何かのお祝いで買ったりするような特別性はないんですよ。
パリのような観光客の集まる大都市は別として、あと、今は少しずつ状況も変わって来てはいるんですが、昔からある本来のフランスのパティスリーがどういうものかと言うと、菓子だけでなくパンや総菜も扱って、地元の人の日常の食シーンに関わるというのが当たり前にあるスタイルなんです。
フランス人は昔から共働きが多く、家族皆忙しく働いているので、食は町のパン屋だったり菓子屋だったりを頼っているんですね。
週末の夜には菓子屋で買って来た一つの大きなケーキを家族で切り分けて楽しむ習慣があります。何かのお祝いにということではなく、それがフランス人の日常に浸透した食文化なので、日本の菓子屋のように個包装された宝石のような菓子が店頭にずらっと並ぶようなことはなく、普段使いのようなお菓子が中心です。
そういった、フランスの本来の食文化、お菓子の文化というものを、フランスにいる間に直に触れ、学んでいきました。

お菓子作りの難しさ、感覚が問われる職人と言われる所以

「パティスリー・ノリエット」ケーキ

お菓子は実際のところ、8割方は科学的に作れるんです。料理でも最近はそういう風になってきている部分があると思いますが、お菓子はもともと、素材の特性を科学的に理解していれば8割は誰でも失敗なく作れます。でもそこから先の2割が一番大切な部分なのですが、どれだけ理論をわかっていても、上手くできないことがあるんです。この理論では表せない2割の部分を掴むのが菓子作りの難しい点ですね。

あとは感覚ですね。感覚というのは子供の時からの環境で身につくものなので、例えば曲線を一本引く時に、僕らが書く曲線とフランスで育った人たちが書く曲線は同じにはならない。彼らが何の気なしにやることが、自分にはできなくて、異国人であることの差をフランスで働いていると実感します。

そこに近づくには相当な努力と鍛錬が必要で、そんなことまで考えると、現地での経験は3年では足りないんですよね。じゃあ、長くいたら到達できるのかと言われたら、それもわからないですけど、異国文化のものづくりを体得するというのはそのくらい難しいことです。

世紀を超え受け継がれてきた「本物」のフランス菓子を後世へ継承して行く
それがフランス菓子職人になった私の使命

「パティスリー・ノリエット」フランス菓子

なぜ、フランス伝統菓子を継承していくことに拘り続けているか、ということなのですが、まず、新しい料理や菓子が出てきて、それが10年か20年流行ったからと言って、それをフランス料理とかフランス菓子とか、和食、和菓子もそうなんですけど、そう呼ぶのは、本来は違うと思っています。
進化は決して悪くない、ただ、淘汰を生きて100年後も受け継がれている、一つの国の食文化とはそのようなものだと思うのです。
僕は、フランス菓子職人として、日本独自に広まった洋菓子のスタイルではなく、フランス菓子を作ることに拘りたい。じゃあ、フランス菓子って何?と聞かれた時に、自分がフランスで培った経験や技術や想いというものは持っているんですけど、それは自分の中での感覚でしかなく人に説明がつかないこともあります。それに対して何世紀も前から続いてきた伝統や文化というのは、誰にとっても、フランス菓子を語る上で不可分なものなのです。
ずっと受け継がれ続けているものがその国の食文化なんだということを理解して、ものづくりをする人間として、自分の中でそのブレない一本の芯を持っておく事が大事だと思っています。
日本人の僕がフランス菓子を職にして生活させてもらえている、だからこそ、彼らの伝統や文化を理解して守っていくということは大切にしたいと思っています。

店の名前にもなっている看板菓子「ノリエット」誕生秘話

「パティスリー・ノリエット」ケーキとコーヒー

お店を始める時に、何か一つくらい自分の店の名前をつけた菓子を作るというのが菓子屋にはあって、お客様からしたらそれはお店の看板のお菓子だと思われるので、やっぱりいろいろと考えるわけです。で、そこはやっぱりフランス菓子に拘りたくて。

ベースはレストランデザートなんですが、僕がフランスにいた時に働いていたレストランで出していたチョコレートテリーヌのようなお菓子がもとになっています。いろいろと悩んだんですけど、それがすごく美味しかったので、皆にその美味しさをわかって欲しいなと思い、それを店名の「ノリエット」と名付けて出すことも決めたんです。

ただ、レストランは焼いて常温のままお客様に提供できるので、なめらかさとかやわらかさが本当に素晴らしかったんですけど、菓子屋でやるとなると冷蔵しなければならないので、チョコレートとかバターとか使っていて、どうしても固くなってしまうので、少しでも柔らかくなるように何度も改良しました。

最初に出したのは、今みたいな形状ではなく、ココットに入れて、表面を平にしてカカオを振っていたから、お客さんに良くティラミスと間違われました(笑)。ちょうど日本で爆発的にティラミスがはやっていた時だったんですよね。そこからまた改良を重ねて20年かけて今の形に完成しました。

プロが「ネスプレッソ」を選んだ理由は、利便性と味の良さと種類の豊富さ

「パティスリー・ノリエット」コーヒーを持つ人

コーヒーに関していえば、ネスプレッソを導入する以前は、それなりに拘って選んだ焙煎屋さんから豆を仕入れてドリップで落として提供していたんです。でも、スペースの問題だとか、手間の問題だとかは感じていて。ネスプレッソは日本に戻ってきてすぐの頃から、家では飲んでいたんですよ。

10年くらい前なんですけど、前の場所から今の店舗に移転する時に、厨房のスペースの問題とかもあり、その頃には「プロフェッショナル」向けのネスプレッソも出てきて、品質はもちろんなのですが、コーヒーの種類も増えているのを食事で行った先々のレストランで見かけて知っていたので、自然な流れで導入を決めました。

ネスプレッソの特長を語るとしたら、利便性と味の良さと種類の豊富さでしょうか。飲み方によって合う豆というのがあるので、以前、ドリップ式で提供していた時も、ホットコーヒー用、アイスコーヒー用と、何種類かの豆を使い分けていたんですけど、淹れるのも管理も手間がかかって大変で。ネスプレッソは、必要な時に、一杯ずつ飲み方に合った種類を選んで簡単に抽出できて、品質も良くて安定しているので助かっています。今の時代に合っていると思います。

うちでは食後と、お菓子とのセットで提供することが多いので、沢山ある種類の中から、自分のお店にあったコーヒーを、エスプレッソとルンゴとデカフェと3種類選んで使っています。コーヒーは日本から遠い国で生産されていて、個人では情報も少ないですし、拘りたくてもなかなか独自で簡単に入手できないですから、コーヒーのトップ企業だからこそできる生産者との繋がりや、長年蓄積された研究のノウハウがあって品質が保たれていることにも信頼を置いています。

「ネスプレッソ」が実現したサステナビリティの形。“自分にできることをやる”ということ

「パティスリー・ノリエット」リサイクル回収ポイント

SDGsという言葉が幅広く使われるようになりましたが、地球環境を良くするために何が一番効果的かと言えば、人間が欲望を捨てて最低限のものだけで生きるのが良いに決まっていますよね。でも、人間って欲望を捨てるってなかなかできないじゃないですか。美味しいもの食べたいとか、物が欲しいとか。だとしたら、バランスを取りながら環境を良くしていくしかないと思うんですよね。

欲望を捨てきれない人間がせめてもの罪滅ぼしとして、自分にできることはやる、というのは当然の責務だと思っているんです。なので、うちはこんなに良い事してます、SDGsやってます、とアピールするつもりは全くなくて、人として当たり前のことを、当たり前にやるっていう、それだけです。

やれることはやりたい、かと言って僕が何でもできるということでもないので、自分にできる限られた事の中で、ネスプレッソの使用済みカプセルの回収は、その出来ることの一つだったってことですね。
地球を汚しながら生きていてすみませんっていう気持ちが少しでもあるんだったら、できることは皆でしていきましょう、とお伝えしたいですね。

ネスプレッソのリサイクル回収ポイントをはじめてから、お客さまには使用済みのカプセルを沢山お持ち頂いてます。お店のSNSやホームページとかでは何も案内していなくて、ドアにたった一枚、回収場所のサインシールを貼っているだけなんです。後はネスプレッソのウェブサイトに紹介されて、それだけで沢山持ってきてくれます。
新たなお客様も来てくれます。使用済みカプセルだけ気軽に持って来られる人もいれば、そのついでにお菓子を買っていってくれる人もいますね。

これからプロを目指す人たちに願うこと。幸せになる自分の生き方を選べる社会に。

「パティスリー・ノリエット」ケーキ写真

僕はこの道の先を行く師匠や先輩に育ててもらい、この仕事の面白さだったり、大切にすべきものを若い時に気付かされて、信念をもってここまで来れたんですけど、きっとこれからは、僕たちのようなものづくりの仕事って、やりづらくなっていくと思うんです。時代的に。

そういう部分で、若い人たちに対してすごく可哀想な思いもあるし、でも、諦めないでやって欲しいという気持ちもある。金銭的にも精神的にも厳しいというのは、どの業界でプロを目指しても通る道だと思うのでね。そして、若い人たちが、自分で自分の道を選べるような社会ではあってほしい、っていうことはすごく思っていますね。

商業的に上手くいくためにどうするかじゃなくて、幸せな人生を生きるためにどうあるべきか、ってことを社会全体が考えるようになれば、ということを想うんです。

そのため何が必要かと聞かれたら、根本的に商業哲学以外の哲学がないというが今の社会の一番の問題だと思っているので、やっぱりきちんと哲学的に生きる、それが何より大切なことだと思います。
宗教の自由は良いことなんですけど、でも日本が宗教を無くしたときに、それに代わる哲学が商業哲学しかないっていうのが悲しい事で、商業哲学ではなく人としての哲学というのを皆が子供の時から大人になる中で持てるような社会になることがきっと良いことなんじゃないかな、と思っています。自分で自分の生き方を選び、幸せに暮らせる社会であってほしいですね。

フランス伝統菓子の「プロフェッショナル」として、伝道師として。こだわりを持った仕事をされてきた永井氏が選んだネスプレッソ。これからも地球が育んだ美味しいコーヒーを飲み続けられるよう、永井氏にもご協力いただいているリサイクル回収パートナーの取り組みを一緒に進めていきませんか。お客様から受け取った使用済みコーヒーカプセルのリサイクル専用バッグを指定の返送資材に入れて、ネスプレッソまで送り返すだけです。
詳細はこちらのリンクをご参照ください。

店舗情報

「パティスリー・ノリエット」外観

店舗名:パティスリー・ノリエット/プティ・リュタン(休業中・再開時期未定)
住所:東京都世田谷区赤堤5-43-1
営業時間/営業日:(パティスリー・ノリエット) 営業時間 10:00~19:00、火曜、水曜定休
電話番号:03-3321-7784
公式ホームページURL:https://www.noliette.jp/

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