ワールド エクスプロレーションズの特別な味わいのプロファイルをとおして、
世界中のさまざまな都市のコーヒー⽂化とつながっていただく。
このコンセプトと共に、スイス本社のコーヒーチームから、
日本のコーヒーアンバサダーである私に相談がもちかけられたのは、2019年5⽉のことでした。
ワールド エクスプロレーションズが世界で発売される約1年半前のことです。
最初の相談は、「日本の⼈々が好むコーヒーの味わいを教えて欲しい。」というものでした。
日本におけるコーヒーの歴史、食⽂化、コーヒーの味わいの嗜好について
スイスのコーヒーチームにプレゼンテーションをしました。
その約半年後に、日本で実際にコーヒーの味わいに対する市場調査も実施いたしました。
そのような数々のプロセスを経て完成したのが、トウキョウ ルンゴです。


そのコーヒーの特徴は、
• ロングブラック(ルンゴサイズ)
• 主食であるお米を想わせるような自然な甘さとしっかりとした苦味
• 低レベルの酸味
• ミルクとの相性が良い
特に私が訴えたのは、「酸味のレベルの低いコーヒー」にして欲しい、ということでした。
日本の多くの方々が、コーヒーの酸味に対して抵抗感をもっているということは、
市場調査でも明らかになっていました。
また実際に、私自身もコーヒーセミナーやイベントを実施した際、
ユーザーの方々から「酸味が苦⼿」というご意⾒を度々⽿にしておりました。

コーヒーはコーヒーチェリーという果実(実質はその種)から作られるので、本来酸味があります。
それをどれくらいまで低くするか、もしくは他の要素、
例えば苦味、香り、コクのレベルを調整することで、酸味を感じにくくするか、
スイスのコーヒーチームが懸命に向き合い、現在のトウキョウ ルンゴが誕生しました。
コーヒーそのものの開発と同時に、パッケージデザインの開発も進みました。
海外の方にとっても、日本=桜のイメージが強いようで、
開発当初より桜をモチーフとしたデザインの提案をいただいておりました。
悩みどころは、カプセルの色でした。

桜を強調するのであればカプセルの色もピンクにしてもらいたい、私たち日本チーム。
それを理解しつつも、なかなか頷かないスイスのコーヒーチーム。
その理由は2つありました。
1つは、ピンク色のカプセルコーヒー、マスターオリジンズ コロンビアが既に存在していたこと。
もう1つの理由は、トウキョウ ルンゴの原点である
「ヴィヴァルト・ルンゴ」のカプセル色を継承したい、ということでした。


最終的にカプセルの色は「ヴィヴァルト・ルンゴ」で用いられていた水色、
カプセルに印刷されるデザインは桜に決定しました。
ピンクのカプセルカラーは実現しませんでしたが、
コーヒースリーブ(カプセルが⼊っている箱)には、ピンク色の桜が描かれています。
ワールド エクスプロレーションズシリーズの1都市のコーヒーとして
日本が選ばれたことがとても嬉しいです。
そして、その開発に少しでも携われたことは、私にとって何よりの喜びです。

トウキョウ ルンゴの楽しみ方として、カプセルやコーヒースリーブに描かれている桜にちなみ、
桜餅とのペアリングはいかがでしょうか。
桜餅には⼩⻨粉でつくるものと道明寺粉でつくるものがあるようですが、
今回は道明寺粉で作られた桜餅とペアリングします。
その理由は、トウキョウ ルンゴで感じる甘さが日本⼈の主食であるお米を想わせるものだからです。
和菓子には酸味を感じさせるものがほとんどありません。
一方で和菓子によく使われる、⼩⾖を炊いて作る餡はしっかりとした甘みがあり、
その余韻が⻑く続きます。
酸味のレベルが控えめで、しっかりとしたコクと苦味のあるトウキョウ ルンゴなら、
和菓子との相性は抜群です。
⾆の上に⻑く残るお菓子の甘い余韻にトウキョウ ルンゴのコクと苦味が重なります。
バランス良く調和する味に続いて、
桜の葉の香りやトウキョウ ルンゴの花を想わせる香りに満たされます。
咲き誇る桜を眺めながら、五感を満たす春のペアリングをお楽しみください。

味わいの強さ 6